法律情報 事務所報

[平成20年4月発行]

 金融商品取引法における,財務報告にかかる内部統制の報告制度がスタートしました(上場会社)。会社法により,会社の業務の適正を確保する体制の構築が求められるようになり,また,公益通報者保護法により,企業内部の公益通報者を保護することで間接的に企業コンプライアンスを促す制度が導入されるなど,コンプライアンスに対する社会的な関心は非常に高まっています。
 そこで,コンプライアンスを向上させるために,どのような体制を取るべきか,どのように体制を構築していくのかについて簡単に説明します。

 構築のステップ

各ステップについて

1 経営トップの意思決定

 コンプライアンスを社内に徹底させるためには,経営トップがコンプライアンスを重要な経営課題の一つとして認知した上で,本格的な取り組みの開始を経営トップ名で社内外に宣言するとともに,自ら先頭に立って取り組みを進めるという姿勢を示すことが必要です。
コンプライアンス体制の構築は,社内の全社員が参画する取り組みであり,トップダウン方式で進めるとともに,トップが機会あるごとにコンプライアンスの重要性を説くことが従業員の自覚と意識改革を促し,かつモチベーションの維持につながります。 

2 コンプライアンス体制構築の検討

(1)コンプライアンス基本方針の策定
 コンプライアンスに対する社員の意識を高め,全社員の行動規範を示す基本方針を策定します。

(2)コンプライアンス委員会,コンプライアンス担当部局の設置
 コンプライアンス体制について定期的な点検を行い,コンプライアンスに関する指導,改善を図る組織を設置します。形式的に組織を設置するだけでは,コンプライアンスを推進することはできません。この組織を実効的なものにするには,社内のあらゆる部門に対し,調査,指導,改善を求めることができる権限を与える必要となります。

(3)コンプライアンスに抵触するリスクの洗い出しおよび分析
 コンプライアンスの向上をはかるためには,まず,会社の業務において,具体的にどのような違反行為が生じる可能性があるかを認識する必要があります。各部門の業務の中で,コンプライアンスに抵触する可能性がある事項を洗い出し,それぞれについてどのような抵触が生じうるかを分析し,抵触が生じないような方針,対応策を検討します。すべてのリスクについて直ちに対応できるわけではありませんので,リスクの重大性,社会的影響の程度等をふまえ,早急な対応が必要な事項に優先順位をつけていくとよいでしょう。

(4)制度面の整備
 コンプライアンスを高めるためには,コンプライアンス違反の早期発見が重要になりますので,コンプライアンスを早期に発見できる制度を整備する必要があります。具体的には,内部監査を実施したり,違反行為に関する相談窓口・通報窓口を設置したりすることが考えられます。また,違反行為が発見された場合には,速やかに対応しなければなりません。そのため,違反行為に対する対応については,事前に方針を決定しておくとともに,経営トップに違反事実が速やかに伝えられ,対応について判断されるような体制を整備する必要があります。

3 コンプライアンスマニュアルの作成

 全従業員にコンプライアンスを浸透させるため,コンプライアンスマニュアル等を作成し,全従業員に配布し,その遵守を求めます。マニュアルの策定にあたっては,上記2(3)により検討したリスク・具体的な対応策等をふまえ,従業員が業務遂行上で直面する場面を想定し,その場で取ってはいけない行動と取るべき行動を具体的に示すことが重要です。 

4 コンプライアンスプログラムの策定

 コンプライアンスを社内に定着させるための具体的な計画を策定します。いつ,何を,どのように行うかをプランニングします。なお,計画の策定の際には,上記2(3)で分析した優先順位の高いリスクから対応するようにします。コンプライアンス推進のための取り組みは,単年度で完結するものではないので,中長期的な計画とした上で,年度ごとに実施状況を評価検証し,次年度への計画に反映させることになります。また,経営トップがプログラムの運用状況を把握し,プログラムの実施とその有効性について検討することができるような体制とするのが望ましいところです。 

5 周知徹底

 形式的にコンプライアンス体制を整えたとしても,個々の従業員がコンプライアンスに関する意識を持っていなければ,違反行為は防止できません。コンプライアンスを社内に定着させるには,各従業員がコンプライアンスの必要性・重要性を理解することが必要不可欠です。定期的な研修,積極的な広報活動等,周知徹底をはかる方策を検討しなければなりません。 

6 検証・見直し

 コンプライアンスへの取り組みは継続して行うものであり,定期的に運用状況を確認し,問題点および改善策について検証し,体制の見直しを行っていく必要があります。その際には,従業員へのアンケートやコンプライアンス担当部門以外の部門からの意見を聴取するなどして,客観的に検証するようにしてください。

以上 

 コンプライアンス体制の構築に関するご質問等ございましたら,お気軽にご連絡ください。また,当事務所では,コンプライアンス委員会の外部委員やオブザーバーとしての意見提供,コンプライアンス通報窓口の設置に関するサポート,通報外部窓口として通報案件の取り扱い,コンプライアンス体制の検証等も行っております。自社のコンプライアンス体制について,社外の意見も取り入れたい,改善したいがどのように改善してよいかわからないという場合には,お問い合わせください。

コンプライアンス体制チェックシート







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