法律情報 事務所報

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■民事上の責任① 

 今回は、民事上の責任に絞ってみていきます。交通事故を起こしてしまった場合、加害者は、民事上、民法709条(不法行為)に基づく損害賠償義務を負う可能性がある、すなわち賠償金を支払う責任が生じる場合があるということは前回お話しました。
 では、具体的にどのくらいの賠償金を支払う義務を負うことになるのでしょうか。

 一口に交通事故といっても、被害者の物が壊れた(物損)にとどまった場合、被害者が怪我をしてしまった場合、被害者が運悪く死亡してしまった場合など、被害の対象や程度は様々です。
 交通事故によって生じる損害は一定ではないにもかかわらず、一律に賠償金の額を決めてしまうと、重大な被害を受けた人ほど被害に対応した弁償を受けることができないことになります。これは、同じ物損であっても、自転車が壊れた場合と高級外車が壊れた場合とでは、自ら損害額が異なってきますし、被害者が怪我をした場合でも、通院1日で済んだ場合と2カ月の入院生活を余儀なくされた場合とでは、治療費について考えてみただけでも、かなりの違いが生じることは容易に想像ができると思います。不法行為制度は、被害者の救済(損害の填補)に主眼がありますから、そのような事態は不法行為制度の趣旨に合致しません。
 そこで、実務においては、被害者に生じた損害を性質ごとに分類し、分類された費目ごとに賠償金額を算定し、それを合算して民法709条(不法行為)に基づく損害賠償義務としての賠償金額を算出するという運用がなされています。
 そして、被害者に生じた損害を性質ごとに分類したのが、下記の表です。

 具体的には、被害者に生じた損害が人に対するものであるかという観点から、大きくⅠ人身損害、Ⅱ物的損害に分けられます。
 Ⅰ人身損害はさらに、生じた損害が財産についてのものであるかという観点から、ⅰ財産的損害とⅱ精神的損害に分けられ、ⅰ財産的損害は、①積極損害と②消極損害に分けることができます。
 ①積極損害や②消極損害というのは、あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、①積極損害とは、事故が生じたことによって支出を余儀なくされた損害のことで、治療費、付添看護費、雑費、通院交通費・宿泊費等が考えられます。これに対して、②消極損害とは、交通事故がなければ将来得られたであろう利益が得られなくなった損害のことで、休業損害、後遺症・死亡による逸失利益があります。
 また、ⅱ精神的損害とは、いわゆる慰謝料のことで、精神的苦痛を金銭に換算して算出することになります。
 Ⅱ物的損害も、理論上はⅰ財産的損害とⅱ精神的損害に分けることができますが、物的損害おける精神的損害は、原則として認められない取り扱いとなっています(たとえば、自転車が亡くなった父の形見であり、自転車が壊れてしまったことによって精神的苦痛を被ったとしても、かかる苦痛についての慰謝料を求めることはできません。)。
 したがって、交通事故の加害者は、被害者に生じた損害をこのように性質ごとに分類して算定された賠償金額を合算した金額を支払う義務を負うことになります。
 

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■交通事故の基本 

 まずは、交通事故を起こしてしまった場合について考えてみましょう。交通事故を起こしてしまった場合、以下の3つの責任を負う可能性があります。

  1. 民事上の責任
     加害者は、民事上、民法709条(不法行為)に基づく損害賠償義務を負う可能性があります。簡単にいえば、被害者にお金(賠償金)を支払う責任が生じる場合があるということです。もっとも、賠償金を支払う責任が生じても、交通事故の態様や被害の程度、被害者の行為などによって、その金額は増減します。
     なお、全ての自動車は、自動車損害賠償保障法(自賠責法)に基づき、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)に入っていなければ運転することが出来ません。そして、自賠責保険に加入していれば、1人あたり死亡については3000万円まで、後遺障害については最高4000万円まで、傷害の場合は120万円までは自賠責保険で賄われますから、たとえ損害賠償義務を負う場合であっても、生じた損害がその範囲内であれば、原則として加害者は自分で被害者に賠償金を支払う必要はありません。

  2. 刑事上の責任
     加害者は、刑事上、刑法211条2項(自動車運転致死傷罪)や道路交通法117条1項・72条1項前段(ひき逃げ)等に基づく罰金刑や懲役刑といった刑罰が科される可能性があります。そして、罰金刑は100万円(自動車運転致死傷罪など)、懲役刑は25年(危険運転致死傷罪と道路交通法違反(ひき逃げ)の併合罪など)となる場合があります。

  3. 行政上の責任
     我が国においては、点数制度(自動車等の運転者の交通違反や交通事故に一定の点数を付け、その過去3年間の累積点数が一定の基準に達した場合に免許の停止や取消等の処分を行う制度)が採用されており、加害者は、交通事故の態様によって算出される点数に応じて、運転免許の停止(免停)や運転免許の取消し(免取)といった行政処分を受ける可能性があります。 

 たとえば、Aさんが、普通四輪自動車を運転中、歩行中のBさんをはねて加療約1週間の怪我をさせてしまったような場合、Aさんは、民事上の責任としてBさんに対して賠償金を支払うとともに、刑事上の責任として罰金を支払わなければならないといった責任が課されることがありえます。また、行政上の責任として免停処分を受けることもありえます。
 もっとも、Aさんが、普通四輪自動車を運転中、歩行中のBさんをはねて加療約1週間の怪我をさせてしまったということだけで、民事上は○○円の賠償金が発生する、刑事上は罰金刑になる、といった一義的な結論が導かれるものではありません。そのため、実際に交通事故が起きた場合には、事故現場の状況や、加害者側の加害態様や被害の程度、被害者の行為、加害者の事故後の対応など様々な事情が勘案されて民事上刑事上の責任が課されていくことになります。

 次回からは、民事上の責任、すなわち賠償金の額がどのように算出されるのかについてみていくことにします。

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國安耕太です。

 道を歩いていたら、信号無視をした車にはねられてしまった。
 車を運転していたら、自転車が飛び出してきて避けきれずにはねてしまった。

 道路に自動車が溢れている現代社会においては、どんなに気を付けていても、巻き込まれてしまう、起こしてしまう危険があるのが交通事故です。
 みなさんの周りでも、交通事故に遭われた経験を持っている方は意外と多いのではないでしょうか。
 かくいう私も高校2年生の時に自転車に乗っていて、一時停止線を無視した車にはねられたことがあります。この時はまだ法律について何も知らなかったため、保険会社に言われるがままに自転車の修理費(2万円くらいだったと思います)を受け取っただけで示談をしました。
 私の場合は、相手方の車のスピードが遅かったこともあり、幸いにも無傷であったため、特に問題はありませんでしたが、もし怪我をしていたら、もし後遺症が残っていたら、一体どうすればよかったのでしょう?

 このコラムでは、このように身近であるけれども、意外と知らない交通事故について、具体的な事例を挙げつつ紹介して行きたいと思います。





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