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平成21年4月24日

不正競争防止法の一部を改正する法律案が平成21年4月21日、衆議院本会議で可決・成立しました。営業秘密の保護を強化することを目的した改正ですが、ここでは改正点について簡単に説明します。改正の詳細な内容は、経産省の次のサイトをご覧下さい。

  http://www.meti.go.jp/press/20090227001/20090227001.html

 なお、参議院経済産業委員会の附帯決議があります。

  http://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/171/f071_040901.pdf

第1 改正点
 
①営業秘密侵害罪における現行の目的要件である「不正の競争の目的」を改め、「不正の利益を得る目的」又は「保有者に損害を与える目的」とする(21条1項各号)。
 ②詐欺行為または管理侵害行為により、営業秘密を不正に取得する行為について、その方法を限定することなく罰則を適用する(21条1項1号)。
 ③原則として「使用・開示」行為を処罰の対象としている営業秘密侵害罪の行為態様を改め、営業秘密の管理に係る任務を負う者がその任務に背いて営業秘密を記録した媒体等を横領する行為、無断で複製する行為等について、処罰の対象とする(21条1項3号)。

第2 目的と内容
 
1 改正の目的
 
知識集約型経済の急速な発展に伴い、無形資産たる技術・ノウハウ等の価値ある情報の重要性が高まる中、グローバル化や情報化の進展により、現行の不正競争防止法では捕捉することができない営業秘密の流出事例が、多数発生している。
 こうした状況に対処し、営業秘密の不正な流出を防止して、我が国の産業競争力の維持・強化を図るため、営業秘密侵害罪の構成要件を見直し、現行法における処罰の間隙をふさぐこととする。
 
 2 内容
 
① 営業秘密侵害罪における現行の目的要件である「不正の競争の目的」を改め、「不正の利益を得る目的」又は「保有者に損害を与える目的」とする(21条1項各号)。
 
現行法においては、「不正競争の目的」が認められない限り、刑事罰の対象とならなかったため、競業関係にない第三者に営業秘密を開示する行為や、単に保有者に損害を加える目的で開示する行為を処罰できなかった。
 そこで、広く一般に「不正の利益を得る目的」又は「保有者に損害を与える目的」で営業秘密を取得した者であれば、刑事罰の対象とできるようにした。

 ② 詐欺行為または管理侵害行為により、営業秘密を不正に取得する行為について、その方法を限定することなく罰則を適用する(21条1項1号)。
 
現行法においては、保有者の管理にかかる営業秘密記録媒体等を取得する方法、及び保有者の管理にかかる営業秘密記録媒体等の記載又は記録について、その複製を作成する方法で営業秘密を不正に取得した者についてしか罰則を科すことがでなかった。
 そこで、営業秘密を不正に取得する行為について、方法による限定をなくした。

 ③ 営業秘密の管理に係る任務を負う者がその任務に背いて営業秘密を記録した媒体等を横領する行為、無断で複製する行為等について、処罰の対象とする(21条1項3号)。
 
現行法においては、使用・開示行為がなされて初めて処罰の対象とすることができるにすぎなかったため、第三者への開示目的が明らかであっても、使用・開示行為について立証できなければ処罰することができなかった。
 そこで、使用・開示行為に至らなくても、営業秘密の管理に係る任務を負う者がその任務に背いて営業秘密を記録した媒体等を横領する行為、無断で複製する行為等を行った段階で処罰できるようにした。

以上



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