法律情報 セミナーレジュメ

法律情報 事務所法

精神的不調が疑われる従業員が事実として存在しない被害事実を訴えて有給休暇を全て取得した後も約40日間欠勤を続けたことに対して、会社が諭旨退職の懲戒処分を行った事案について、従業員が、懲戒処分が無効であるとして雇用契約上の地位の確認等を求めた訴訟において、最高裁は、精神科医による健康診断を実施するなどした上で、必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し、経過を見るなどの対応を採るべきであるとして、本件の従業員の欠勤は懲戒事由である正当な理由のない無断欠勤に当たらず、その懲戒処分は無効と判断しました(H24.4.27判決 最高裁HP)。
保険契約者が、約定の期間内に保険料の払込みがないときは「履行の催告なしに保険契約が失効する」との約款の条項に基づき保険契約が失効したとする保険会社に対し、同条項は消費者契約法10条の「信義則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」なので無効と主張して、保険契約が存続していることの確認を求めた訴訟において、最高裁は、契約者の請求を認めた原判決を破棄し、約款の内容が消費者の権利保護を図るための一定の配慮をしていることに加え、失効前に契約者に対し督促を行う運用を確実にした上で約款を適用していれば、同法同条に該当しないとして、かかる運用を確実にしていたかなど、「消費者に配慮した事情」について審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻しました(H24.3.16判決 最高裁HP)。
本件は、上場会社であったY(西武鉄道。被告、被控訴人、被上告人)の株主・元株主であるXら(原告、控訴人、上告人)が、有価証券報告書等に虚偽の記載がされなければY株式を取得することはなかったとして、上場廃止リスクという瑕疵がある株式の取得により被った損害をY及びその取締役等に対して賠償することを求めた事案ですが、最高裁は、Xらの損害賠償請求は理由があると判断するとともに、損害額の算定方法を示しました(H23.9.13、最高裁HP)。
発明の名称を「餅」とする特許(「本件特許」)の特許権者であるX(越後製菓、原告・控訴人)が、Y(佐藤食品工業、被告・被控訴人)の「サトウの切り餅」等の製品(「Y製品」)を製造・販売等する行為が本件特許の侵害に当たると主張し、Y製品の製造等の差止め等を求めた事案において、知財高裁は、「Y製品は本件発明の構成要件をすべて充足し、本件発明の技術的範囲に属する」と判断しました(H23.9.7中間判決 最高裁HP)。
最高裁は、村上ファンドによるニッポン放送株式インサイダー取引事件について、証券取引法(平成18年法律第65号による改正前のもの。現「金融商品取引法」。以下同じ。)167条2項にいう「公開買付け等を行うことについての決定」をしたというためには、同項にいう「業務執行を決定する機関」において、「公開買付け等の実現を意図して、公開買付け等又はそれに向けた作業等を会社の業務として行う旨の決定がされれば足り、公開買付け等の実現可能性があることが具体的に認められることは要しない」との判断基準を示し、村上元代表(「M」)及びファンド運営会社(「A社」)の上告を棄却する決定をしました(H23.6.6決定 最高裁HP)。同決定により、Mに懲役2年(執行猶予3年)、罰金300万円、追徴金11億4900万6326円、A社に罰金2億円とした二審判決が確定します。
最高裁は、いわゆる更新料(賃貸借期間終了時に更に契約を更新するに際して授受されるものとして定められる金員)条項について、賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条により無効とすることはできないと判断しました(H23.7.15判決 最高裁HP)。
いわゆる敷引特約(居住用建物の賃借人が、賃貸借契約時に差し入れた敷金・保証金のうち一定額を控除し、これを賃貸人が取得する旨の特約)の有効性について、最高裁は、賃貸人が契約条件の一つとしていわゆる敷引特約を定め、賃借人がこれを明確に認識した上で賃貸借契約の締結に至ったのであれば、敷引金の額が高額に過ぎる等と評価すべき事情のない限り、消費者である賃借人の利益を一方的に害するものではなく、消費者契約法10条により無効となるものではないと判断しました(H23.7.12判決 最高裁HP)。なお、本年3月24日にも同趣旨の判決が言い渡されています(平成21年(受)第1679号 最高裁HP)。
上場親会社(Y社)が吸収分割により完全子会社に事業を承継させた際、親会社の株主(X社)から株式買取請求権が行使されたが、買取価格が合意できず、裁判所に価格決定が申立てられた事案において、最高裁は、組織再編においてシナジーその他の企業価値の増加が生じない場合、原則として、買取価格は、株式買取請求がされた日における当該組織再編を承認する決議がなければ当該株式が有したであろう価格(「ナカリセバ価格」)をいい、同日の市場価格終値をもって当該価格を算定すると判断しました(H23.4.19決定 最高裁HP)。
住宅設備機器の修理補修等を行うX社が、同社と業務委託契約を締結していたカスタマーエンジニア(CE)が加入する労働組合の団体交渉の申入れに対し、CEが労働者に該当しないことを理由に拒絶したことについて、最高裁は、CEは労働組合法(労組法)上の「労働者」に該当し団体交渉を拒否した会社の行為が不当労働行為を構成するものと判断しました(INAXメンテナンス事件。H23.4.12判決 最高裁HP)。
2009年以降、中国は日本の最大の輸出相手国となっており(なお、2002年以降、中国は日本の最大の輸入相手国)、これに伴い、日中間の商事紛争は今後益々増加していくことが予想されます。日中間の国際取引契約に関する紛争を解決する手段としては、一般的に訴訟はあまり適しているとはいえません。他方、日本と中国は、いずれも外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約(通称「ニューヨーク条約」)に加盟しています。そのため、日中間の国際取引契約では、仲裁条項を合意することが比較的多くなっています。そこで、今回のリーガルメモにおいては、日中の仲裁制度の概要及び仲裁条項の定め方について検討することにします。
最高裁は、2011年1月18日(まねきTV事件)及び20日(ロクラクⅡ事件)に相次いで著作権侵害の行為の主体に関する重要な判決を出しました。両事件とも、放送事業者(「X」)が、インターネットを利用して遠隔地においてテレビ放送を視聴することができるようにするサービスを提供している事業者(「Y」)に対し、著作権侵害に基づく差止め、損害賠償の支払等を求めていた事案ですが、いずれも知財高裁では著作権侵害を認めず、Xの請求が棄却されていました。
ところが、最高裁は以下のとおり判示し、両事件とも実質的にXの逆転勝訴となりました。
2009年12月26日に公布された中国侵権責任法(不法行為法)が2010年7月1日に施行されました。特に製造物責任については、製造業者のみならず販売者にもリコール義務や懲罰的損害賠償義務が明記される等、消費者の権利保護が図られています。2009年の香港を除く中国への輸出累計額は、戦後初めて米国を上回り、中国は日本の最大の輸出相手国となりました 。また、日本から中国への輸出は、9割以上を電気機器、一般機械、輸送用機器等の加工物が占めており、中国に進出している日系企業の70%以上が製造業に集中しているとも言われています 。
このような状況にかんがみますと、中国の製造物責任法制は、中国に進出する日本企業にとって避けて通れないものであるといえます。
貸金業を営む会社の従業員が、貸金の原資の調達である旨顧客を欺罔し金員を詐取した行為につき、「業務の執行について」(民法715条1項)というためには、当該欺罔行為が使用者の事業の範囲に属するだけでなく、これが客観的、外形的にみて、被用者が担当する職務の範囲に属するものでなければならないと判示した最高裁の判決を紹介いたします(H22.3.30判決 最高裁HP)。
最高裁は、土地の売買契約締結当時に法令の規制の対象ではなかった土壌汚染が瑕疵に当たるかどうかにつき、当事者間において予定されていた目的物の品質・性能を有するか否かは契約締結当時の取引観念から判断すべきところ、本件土壌汚染は、契約当時健康被害のおそれが認識されておらず、当事者間において、土地が備えるべき属性として当該汚染がないことや、健康被害を生じるおそれのある一切の物質が含まれていないことが特に予想されていたものでもなく、民法570条にいう瑕疵には当たらないと判断しました(H22.6.1判決 最高裁HP)。
最高裁は、土地の賃貸人および転貸人が、転借地上の建物所有者(転借人)の根抵当権者に対し、転借人に地代の不払等契約解除原因が生じた場合、解除の前に根抵当権者に通知をする旨の条項が含まれた念書を差し入れたときは、かかる内容の法的義務を負い、同義務に違反すれば原則として損害賠償責任を負うと判断しました(H22.9.9判決 最高裁HP)。
最高裁は、会社の事業計画として取締役が行った株式買取価格の決定について、株式の買取方法及び買取価格の決定が著しく不合理であるとはいい難いとし、また、決定に至る過程にも不合理な点はないとして取締役らの善管注意義務違反を否定しました(H22.7.15決定 最高裁HP)。
最高裁は、特別背任罪を構成する任務違背にあたるか否かに関し、金融業務に際して要求される銀行の取締役の注意義務の程度は、一般の株式会社取締役の場合に比べ高い水準のものであると判断しました(H21.11.9決定 最高裁HP)。
今般、最高裁は、退職した従業員の競業行為が違法となるかについて判断しました(H22.3.25判決 最高裁HP 原審:名古屋高判H21.3.5)。
今般、最高裁は、偽装請負*において、注文主と請負人の労働者との間に雇用契約が成立したとする大阪高裁(H20.4.24判決)の判断を否定し、偽装請負が労働者派遣に該当することを認めました(H21.12.18判決 最高裁HP)。
今般、最高裁から監査役の善管注意義務に関連する重要な判決が出ましたので、お知らせ致します(最判H21.11.27 最高裁HP)。


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